『生き物の死にざま』稲垣栄洋著 不思議な生き物がいっぱい。
著者は農学教授とのこと。下記のウェブの記事につられて手に取ってみました。
生き物がどのように次世代に生命をつなげ、自らはどのように死んでいくのかを解説しながら、生命の営みと不思議さを問いかけてきます。
ーオスがメスに食べられるカマキリ、
ーオスがメスに寄生して最後はメスに吸収されるチョウチンアンコウ、
ー老化しないハダカデバネズミ(=裸出っ歯ネズミ、すごい名前。。。)
などなど、なじみのある生き物、初めて耳にするマニアックな生き物たちの不思議な生態が紹介されます。
ときおり生物学の知識を軽くおりまぜながらも、素人に読みやすいよう深入りはしないようになっています。
1つの生き物に対して6ページほどでコンパクトに紹介されているのでテンポがよく、1時間くらいでサクッと読めます。
読み進めて感じたのは、生き物は以下の2つのルールに支配されている、ということです。
①個々の生命の存続よりも遺伝子を伝えていくことが優先される。
メスに食べられる危険を冒して交尾のためにメスに近づくカマキリのオス、自らは子孫を残せず、子孫を残す能力を持つ女王バチのために働く働きバチなど、自分の命を犠牲にしてでも他の命を助け、種の遺伝子を次世代に伝えていく生き物が多々存在する。
②「死」はあらかじめプログラムされた高度な仕組みで、逃れることはできない。
生命は世代交代を進めるために老いて死ぬという仕組みを作り出した。死ぬのは高度な生物で、細胞分裂をするだけの単細胞生物は死なない。
人間は知恵をつけた結果、この2つのルールから抜け出そうとしていますね。
①については、日本はじめ先進国では少子化が進んでいますが、これは個々の生命体の活動が遺伝子存続よりも優先されるようになった結果と言えるのでしょう。
また、②についても、医療の発達により、死亡リスクを減少させるための色々な研究、治療が進められています。
例えば、細胞がガン化するのはあらかじめ細胞に組み込まれたプログラムが原因という研究もありますが、だとすると、将来、医療が進んでガンを根絶した先にはいったい何が待っているのでしょうか。
などなど考えさせられました。
エッセイ風の本で、あまり解説的にならずに読者に考えさせる余地を多く残してあり、良書です。