わび太だより。~ワインと、ビールに、あと・・散歩?~

ワインとビールが大好物のわび太の日記です。安旨ワインとクラフトビール、東京散歩などをつづります。まったり続けようと思います。

映画と本。「ウスケボーイズ」

昨年丸藤葡萄酒に行ったときに、ワイナリーの人から教えられた、ワインをテーマにした映画、「ウスケボーイズ」。

先日ふっと思い出し、アマゾンプライムで観賞しました。

 

「ウスケ」というはてっきり何かの隠語かと思ってましたが、シャトーメルシャンでワイン醸造を手がけ、後にワインコンサルタントとしても活躍した麻井宇介(本名:浅井昭吾)さんという方。

私は全く存じ上げませんでしたが、甲州醸造シュールリー製法を導入するなど日本ワインの発展に多大な功績をのこした方のようです。

 

丸藤葡萄酒で説明を受けた時に、「シュールリー製法はメルシャンから技術提供を受けた」と語っていて、大手とは言え競合他社から技術提供があるのは奇妙だなと思ったのですが、これも地域で助け合って競争力を底上げしていくという麻井氏の考え方が背景にあったようですね。

 

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桔梗ヶ原メルローではありませんが・・・

 

この映画は、麻井宇介氏の遺志を継いでワイン造りにいそしむウスケボーイズ達の実話。

大きな展開を見せるようなドラマチックなストーリーではないですが、ワインが年を経て熟成されていくような、味わい深い映画でした。

 

原作となった本も読んでみました。

麻井氏とボーイズとの交流に比重を置いている映画と異なり、原作はボーイズそのものにより焦点が当たっています。

原作を読んで改めて映画を見てみると、謎だった各シーンの意味がよく分かります。 

 

映画のほうは、原作にあるエピソードを盛り込みすぎて、観る側に若干消化不良を起こさせている気がしました。

原作を読んでから映画を見たほうがいいでしょう。

 

また、ウスケボーイズの面々が試行錯誤しながらどうやってワインの質を向上させていったのか、映画では今ひとつ伝わらないのでぶどう作りにもっと焦点を当ててもよかったと思います。時間と予算の関係で難しかったのかもしれませんが。

 

原作のほうは日本のワイン造りの歴史もコンパクトにまとめていて、非常に読み応えのあるノンフィクションでした。

ボー・ペイザージュの岡本氏がワイン造りにのめり込むあまり、自分のワインしか基本的に飲まないようになった、というくだりがあります。

仙人のような境地で、中島敦の「名人伝」という小説を思い出しました。

弓の使い手が弓の道を極め、弓を使わずに鳥を射落とすようになり、最後には弓という道具の存在すら忘れてしまうという話なのですが、道を極めるというのはそういうことなのかもしれません。