AOCの「C」の意味に納得。 「ワイン法」 蛯原健介著
ワインを飲みながら読書。
「ワイン法」。著者は明治学院大学法学部教授でワイン法研究の国内第一人者とのこと。
論文調というか大学の教科書風といった感じですが、読みやすいです。
ワイン法とありますが、ほとんどがフランス中心の話です。
まあ当然ですが。
今日当たり前に目にしている原産地呼称も、導入に当たっては色々な衝突、調整の苦労があったことが分かります。
フランスにおけるワインの原産地呼称の動きは、ワインの生産量が多くなり、供給過剰となった20世紀初めころからはじまっていたようです。
しかし、本格的な法制化は、1919年の第一次世界大戦終了直後で、敗戦国のドイツにシャンパーニュやブルゴーニュなどのフランスの原産地呼称の保護を義務づけるため駆け込みで導入されたとのこと。
ワイン原産地呼称に第一次大戦が関係していたというのは面白いですね。
なるほど、と思ったのが、AOC(Appellation d’Origine Contrôlée)導入の前に、AO(Appellation d'Origine=原産地呼称)という制度があったということです。
AO導入の当初は、とにかくその土地で生産されていれば「○○産」を名乗れましたが、その後、1935年になって、一定の品質を確保していなければ「○○産」を名乗れない、AOCの考え方が導入されました。
しかしAOもしばらく残ったため、一時期両者は並立しており、1942年にAOCに一本化されたようです。
よくAOCを「原産地統制呼称」と訳しているのを見かけていて、フランス語とずれているし、意味の分からない日本語だなと思いずっと違和感がありました。
この本を読んで合点がいきましたが、品質が管理されていないAOに対して、AOCは「(品質が)統制・管理されている原産地呼称」という意味なので、あえて訳すならば「統制原産地呼称」のほうがより正確な訳なんでしょうね。
しかし、AOC導入の経緯は詳しく触れている一方、紙面の都合でしょうか、
AOPやIGPなど最近のEUワイン法の流れ、また日本のGI導入の動きのあたりは駆け足の解説になっており、もうちょっと説明してほしいなと思いました。